火を熾す

冷えきった暖炉に、小さな火をまた灯せるように。風を送って、また大きな火を熾せるように。

ぱんぱんぱん

 

 

 

世界は疲れたって。

 

 

進化論でも創世記でもビックバンでも光あれでもなんでもいいよ。

 

 

世界は疲れたんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた一人死んだ。

 

 

食べられなくて死んだ。

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた一人死んだ。

 

 

大人の事情というやつで、流れ弾に当たって死んだ。

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた一人死んだ。

 

 

下痢して死んだ。

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた一人死んだ。

 

 

治療受けられなくて死んだ。

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた一人死んだ。

 

 

認められたくて死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

はいまた一匹死んだ。

 

 

捨てられて邪魔だから死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

はいまた一頭死んだ。

 

 

高く売れるから死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

はいまた一匹死んだ。

 

 

おいしいから死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

うわ、いっぱい死んだ。

 

 

健康改善と外聞のために死んだ。

 

 

 

パンパンパン

 

 

はいまた一匹死んだ。

 

 

あったかくておしゃれだから死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

はいまた死んだ

 

 

教育のために肉親から引き剥がされて死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

死んだ死んだ死んだ。

 

 

デブが笑うために死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おなかすいた。」

 

 

ポテチの脂でコントローラー汚した子供と

 

 

ハゲワシに見取られたアバラの少年はきっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「死にたくない」

 

 

タバコと酒で早死にしそうな中年と

 

 

一枚の硬貨握り締めて薬問屋から追い出された少年はきっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「もっと、評価されたい。肯定してほしい。」

 

 

欠点探していじめた子供と

 

 

小さい手で遺書を目立つところに置いた子供はきっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「苦しい。助けて。」

 

 

ガス室で殺されたユダヤ人も子猫もきっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「せまい。汚い。暑い。痛い。苦しい。」

 

  

奴隷船で運ばれた黒人も不衛生なケージや檻に閉じ込められた家畜もきっとおんなじこと思ってた。

 

 

「お母さんの存在を感じていたい」

 

 

生後間もない赤ちゃんと、動物園に連れてこられるトラの赤ちゃんもきっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「ゆっくり羽を伸ばしてみたい」

 

 

仕事詰めのOLは残業確定の書類の上で。出荷予定のニワトリは糞尿の上で。

 

 

きっとおんなじこと思ってた。

 

 

 

「愛されたい」

 

 

 

きっとみんな、おんなじこと思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は疲れて

 

 

 

日照りはひどくて

 

 

 

雨季は全く土を肥やさない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた死んだ。

 

 

パンパンパン。

 

 

はいまた死んだ。

 

 

パンパンパン

 

 

はい死んだ死んだ死んだ。

 

 

パンパン、パン。