火を熾す

冷えきった暖炉に、小さな火をまた灯せるように。風を送って、また大きな火を熾せるように。

最愛の人の目に、あと何度ぼくは、映ることができるのだろう。

 

最愛の人の目に

 

 

 

あと何度、ぼくは

 

 

 

映ることができるのだろう。

 

 

 

失ってしまう。

 

 

その前に。

 

 

もう一度、君の目の奥で

 

 

ぼくという像を結ばせてほしい。

 

 

 

 

 

 

愛するものと、永遠の別れを告げるときが

 

 

近づいているのを感じている。

 

 

そんな、夏の夜風に儚さを覚える今日この頃。

 

 

 

 

 

 

ペットロス。

 

 

そんな言葉が

 

 

現実味を帯びて

 

 

迫りくるのを感じている。

 

 

きっと、ぼくはもうすぐ

 

 

ひとり、家族を失う。

 

 

 

 

 

 

白内障の気があります。」

 

 

彼女の眼が、ついに白内障にかかった。

 

 

原因は老衰だった。

 

 

徐々に靄がかって行く世界。

 

 

きっと、不安だろうな。

 

 

だんだん、見えなくなっていく。

 

 

大金はたいて、家族の延命図ろうとする人の気持ちがやっとわかったよ。

 

 

怖いだろうな。

 

 

見えてたものが見えなくなっていく。

 

 

大好きな景色も、おいしいご飯も、みんなの笑顔も

 

 

見えなくなって、いく。

 

 

彼女の視覚に、ぼくはあと何度、像を結べるのだろうか。

 

 

あと何度、映れるのだろうか。

 

 

2018年 7月4日(水)

今日は記念すべきエディ10歳の誕生日だ。

 

「ねえエディ、10歳のお誕生日おめでとう!!

もう10歳になったの。

大きくなったねえ。

偉かったねえ。

よし、よし。」

 

 

お気に入りのあごの下と耳の付け根を掻いてやると、エディは嬉しそうに目を細めた。

 

 

エディ、君はついに、10年のときを過ごし、

 

ぼくは当時の倍の年月を生きたことになる。

 

0から10へ

 

10から20へ。

 

赤ちゃんから大人へ

 

小学生から大学生へ。

 

この10年は、楽しかったですか?

 

 

 

 

 

君は、初めて会ったとき、まだ手のひらにおさまるちっちゃな毛玉だった。

 

 

心細げな目で、こっちを見つめていたのをよく覚えているよ。

 

 

他の兄弟姉妹たちを振り返って、ちょっとだけ震えてた。

 

 

小さな体から伝わる体温と心拍を手のひらで感じてたんだ。

 

 

 

淀み。

 

急流が、ふとその勢いを弱めて、

 

岩の陰で、静かに溜まる休息の地。

 

エディ。

 

何をされてもされるがまま。

 

どこか達観した目で、静かに君はそこにいた。

 

 

 

お散歩だけは大好きだった。

 

 

「おさんぽ。」

 

 

この4つのひらがなの発音を

 

 

君の耳は本当によく拾う。

 

 

ハッと首を上げて

 

 

傾ける。

 

 

クイクイって

 

 

傾ける。

 

 

ダル絡みしたくて声かけたとき無視するのは

 

 

あれ、聞こえない振りしてただけだろ。このやろう。笑

 

 

リードに繋ぐと決まって君は一直線に

 

 

さも、やっと自由だと言わんばかりに走り出す。

 

 

いつも必死に、走ってた。

 

 

ぼくは笑って追いかけてた。

 

 

おとなしくも、どこかこずるい君は

 

 

夕飯の度にテーブルへとやって来て

 

 

背中に爪を立てては

 

 

アイドル顔負けの上目遣いで訴えてた。

 

 

レタスが好きだったね。

 

 

野菜ばかりあげてたからかな。

 

 

君はトマトを世界一美味しそうに食べる。

 

 

そんな君にお父さんは弱くって、いつも細切れの野菜を用意してた。

 

 

水猟犬のくせに、水が苦手。

 

 

水溜まりすら全力回避。

 

 

そんな君を、川へ連れていって

 

 

泳がせて笑ってた。

 

 

その節は、本当に申し訳ありませんでした。笑

 

 

シャワー浴びるとほっそい体がわかる。

 

 

鼻の近くに指を近づけるとなぜか顔をしかめる。

 

 

「おいで」っていうと、そうやって鼻にしわを寄せて

 

 

顔をくしゃくしゃにしながらすり寄ってきたね。

 

 

耳の後ろが気持ちいいって知ってるよ。

 

 

鼻面撫でられるのも好きでしょ。

 

 

君の足の裏の匂いはキャラメルポップコーンで

 

 

君の毛は風の匂い。

 

 

腋を撫でると足がのびる。

 

 

みょーんって伸びる。

 

 

鼻を触るとくしゃみをする。

 

 

くしゅん、くしゅんってくしゃみする。

 

 

それが可愛くていつも鼻触っていたずらしてた。ごめん。

 

 

じと目が得意な君は

 

 

じゃれるぼくを半ば呆れた目で見つめてた。

 

 

のくせして、足を洗うのは嫌いだから

 

 

必死に僕の肩にしがみついてたね。

 

 

夏場は玄関のひんやりしたところで

 

 

冬は布団に埋まって

 

 

きみはいつもまどろんでた。

 

 

まったく。何時間寝てんだよう。

 

 

晴れの日がすき。

 

 

部屋に入る日光のしたでひなたぼっこして

 

 

まぶしそうに目を細めるんだ

 

 

毛の茶色はそれによく映えてた。

 

 

実は雨の日も好き。

 

 

雨のにおいに鼻をひくひくして

 

 

おっとりとした目で君は雨を見ていた。

 

 

そんな君と過ごす雨の日の午前中は

 

 

実はぼくも大好きなんだ。

 

 

五歳のとき、君はお母さんになった。

 

 

やんちゃで元気なシナモンと

 

 

やせっぽちでおとなしいココアと

 

 

天然なお兄さんのジャック。

 

 

彼らを見守る君の目に母親の強さと愛情を感じた日を

 

 

まだ覚えている。

 

 

他の犬には吠えるのに

 

 

散歩中彼らに会ったときはちょっとめんどくさそうにしながらも

 

 

そっと見守っている。

 

 

家族なんだ。君たちは。

 

 

ソファの上でひっくり返したり

 

 

深夜に起こして遊びにつき合わせたり

 

 

写真嫌いなのに無理やり撮ったり

 

 

とにかく君をいじり倒した。

 

 

ごめんて。笑

 

 

疲れた時とか

 

 

悲しかったときとか

 

 

つらかったときとか

 

 

誰にもいえない悩みとか

 

 

君がいたから、吐き出せたんだ。

 

 

その茶色の海に、顔を沈められたんだ。

 

 

君の眼が好き。

 

 

鼻が好き。

 

 

白いあごのひげが好き。

 

 

尻尾がすき。

 

 

肉球が好き。

 

 

仕草が好き。

 

 

寝てるポーズが好き。

 

 

声が好き。

 

 

温もりが好き。

 

 

全部好きって、きっとこういうこと。

 

 

なにかと問題児な妹も

 

 

君にだけは心を開く。

 

 

なにかと短気なお父さんも

 

 

君にだけは口元の緩みを隠せない。

 

 

何かと忙しいお母さんも

 

 

君にだけはちょっと休憩の誘いを断れない。

 

 

ほんと垂れ目。

 

 

いつも眠そう。

 

 

ちょっと困った顔して

 

 

こっち見んなよ。可愛すぎか。

 

 

お留守番ばっかりでごめんね。

 

 

もっといろんなところへ連れ出してあげたかった。

 

 

インドア派に見えて

 

 

君は走るのが大好きだった。

 

 

もっとたくさん遊んであげたかった。

 

 

だんだんと忙しくなる僕たちを

 

 

君は変わらない目で見てた。

 

 

きっと、寂しかった。

 

 

いや、絶対寂しかった。

 

 

見送る僕たちの背中と

 

 

閉まるドアと

 

 

空虚な玄関の空間を

 

 

静まり返った家の中で

 

 

君はどう感じていたんだろう。

 

 

帰ると嬉しそうにじゃれてくる君の姿が

 

 

それを全部証明してたんだね。

 

 

君はおとなしいから

 

 

泣き言も言わないし、問題も起こさないし

 

 

たまに変なところでおしっこするけど

 

 

寂しいなんていわないで、静かにこっちを見上げてた。

 

 

あきれられていたのかな。

 

 

そう思うと、申し訳なさで胸が詰まる。

 

 

与えているつもりで、与えられていた。

 

 

愛しているつもりで、それ以上に愛されていた。

 

 

そんな君を、ないがしろにしてた。

 

 

甘えてたんだ。君のその優しさに。

 

 

だから今更なんだけど

 

 

今更気付いて本当にごめんなんだけど

 

 

まだ君が僕には必要なので

 

 

また、抱きしめさせてくれますか。

 

 

その目に、ぼくを映してくれますか。

 

 

見えていたい。

 

 

五感すべてで、君を感じて

 

 

君に感じられていたいよ。

 

 

失う前に。

 

 

「大切なものは、失ってはじめて気づく。」

 

 

そうなる前に。

 

 

たくさん遊ぶ。

 

 

たくさん撫でる。

 

 

たくさんお散歩に行く。

 

 

たくさん抱きしめる。

 

 

たくさん君の笑顔を目に焼き付ける。

 

 

君が笑顔な時は、決まってぼくも笑顔なはずだから。

 

 

そしたらたくさん、君の目にぼくの笑顔が映せるね。

 

 

大好きです。

 

 

どうか、どうか。

 

 

健やかに、長生きして。

 

 

もっとたくさん笑おうね。

 

 

生まれてきてくれてありがとう。

 

 

お誕生日おめでとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

エディ(ときどきシナモンと愉快な仲間たち)の可愛すぎる写真集

 

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みょ~ん。

 

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初めてのカット。

 

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にへぇ。

 

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シナモン登場。

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か~ら~の~

 

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ぐりんっ

 

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横顔が美人。

 

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冬ですよぉ~っと。

 

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二人は一緒。

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いつもいっしょ。

 

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顔をしかめる。

 

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舌、でてるよ。

 

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受験、受かりますようにって。

 

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in洗濯かご

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いや、親子か。あ、親子だ。

 

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ON THE ハンドバッグ

 

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土手を歩く。

 

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無防備。

 

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海女さんっぽい。

 

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そしてこの顔である。

 

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太陽がまぶしいね。

 

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お散歩が好き。

 

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なんすか。

 

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べろんべろん。

 

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すげえ顔。

 

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超絶美人。

 

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キャラメルポップコーン味ですう。

 

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なんかエロい。

 

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雨を見ている。

 

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うへえ。

 

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呼んだ!?

 

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笑顔。

 

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仲良しか。

 

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うへえ。

 

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おしゃんてぃー。

 

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マフラーしがち。

 

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子犬たち。

 

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幼き日のエディ。

 

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シナモン幼少期。

 

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可愛すぎ。

 

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くあああ。

 

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やっぱり横顔は美人。

 

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お散歩連れってくれえ。

 

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 もうわしゃ年老いたってか。

 

 

 

 

 

 

 

ほんとうにありがとう。

 

これからもよろしくね。

 

いつまでも、いつまでも。